木造戸建て構造計算センター

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建築基準法改正の背景と主な改正ポイント

国会において関連法令の改正が可決され、いよいよ令和7年4月1日より改正建築基準法が施行されました。

今回の建築基準法の改正は昨今の地球規模の気候変動や環境保全の情勢に鑑み、脱炭素社会やカーボンニュートラルを実現するために全ての建築物の省エネ対策を強化するのに加えて、木材の有効活用をすることも目的にされています。

大きなポイントとなるのが、省エネ基準の適合が原則として全ての建築物に適用されるのをはじめ、審査省略制度の対象が縮小されてより多くの建築物で厳格な審査が必要になるほか、二級建築士の業務がこれまで以上に拡大しました。

省エネ基準適合義務化は令和7年4月1日以降に建築される、住宅や非住宅を含む全ての建築物に義務付けられ、原則として省エネ基準を満たすことが求められます。

審査省略制度の見直しでは対象の範囲が縮小され、これまで対象となっていた建築物の種類や規模が制限され、厳格な審査を行うことでより安心安全を高めました。

二級建築士は業務の範囲が拡大し、これまで不可能だった階数が3以下かつ高さ16m以下の建築物の設計や管理ができるようになりました。

構造規制・構造計算への影響

構造規制は、合理化が図られて簡易な構造計算が可能な範囲が拡大されます。

木造戸建の構造計算を行う際で2階建てまでの小規模な木造建築物などに適用され、構造建築士にとってはスピーディに興産を完了させることが可能となり業務を効率化できます。

また、構造計算がより重要視され、安全性や健全性を保つために大きな役割を占めるようになりました。

建築物が外部からの力にどれだけ耐えられるかを示し、以前は2階建て以下の場合は簡易な構造計算ができましたが、改正法施行後は厳密な計算が求められるケースが増加すると見られ、それによって安全性も高めることができます。

特に日本は地震大国と言われているだけではなく、近年になり大規模な災害が発生する可能性が高まっている研究もあり、それに先駆けて耐震性を高める試みでもあります。

構造計算を実施することで建築費におおよそ30万円から50万円程度の費用が加算されることがありますが、利用者にとっては安心安全の裏付けとなり、構造建築士にとっては新たなビジネスチャンスとなることが期待されています。

各制度改正の詳細と実務への影響

壁量計算の見直しでは、木造住宅における壁量計算で準耐力壁の考慮範囲が明確化され、柱の小径の例ではこれまでは軽い屋根や重い屋根の区分で計算が行われていましたが、今後は木造建築物の仕様に応じて計算するようになりました。

なお、壁量計算の見直しには経過措置が設けられ、改正法施行から1年間は改正前の計算が適用可能です。

大規模木造建築物の防火規定変更では、木材を表しに使うことが可能となり、建築デザイナーにとってはデザインの幅が広がり、木の温もりを活かした建築物の台頭が期待されます。

4号特例の縮小が行われ、これまでは延べ面積500平方メートル以下、2階建て以下と言った中小規模の建築物の場合は構造審査を省略できましたが、改正法施行後はこれまで4号とされていた建築物が2号や3号に分類されるほか、300平方メートルを超える場合は許容応力度計算が義務化されます。

法改正前は構造審査を省略するために延べ面積500平方メートル以下に抑える建築物が多い傾向にありましたが、今後は許容応力度計算が必要になる建築物が大幅に増えることが予想されています。

省エネ基準適合審査の対象が拡大され、全ての建築物を新築したり増改築する際に適用になります。

適合するためには建築物エネルギー消費性能適合性判定を受けて性能基準を満たすか、建築物エネルギー消費性能適合性判定で仕様基準を満たすかの2つがあります。

いずれも完了検査が完了すると省エネ基準適合の検査が行われ、その結果によって適合の最終的な可否が判定されます。

省エネ基準適合審査は、まず建築主が建築主事または指定確認検査機関に確認審査の申請を行い、適合が確認されると確認済証が発行されます。

同時に省エネ性能確保計画を所管官庁または登録省エネ判定機関に提出し、省エネ判定が行われ適合判定通知書が送られてきます。

この確認済証と適合されたことが示された適合判定通知書が揃った時、工事の着工が可能になります。

構造建築士や建築デザイナーにとっては改正法への対応が求められ、いくつかの分野については負担が増加することが考えられる一方で、手数料や技術料が加算されることで大きなビジネスチャンスになるという要素もあります。

そして何より万が一の事態に備えて安心安全を高めた建築物を建てることで、物件に付加価値を与えるだけではなく、そこで暮らす人々に安らぎの空間を与えることもできます。

いち早く対応することでバリューを高めるのはもちろん、経過措置が可能なものについては従来の方式にすることが可能で、結果として運用や設計に柔軟性を持たせることが可能となりました。