木造戸建て構造計算センター

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令和七年四月に施行される建築基準法等の改正は省エネルギー基準への適合をすべての新築住宅に義務づける一方、長年運用されてきた四号特例を大幅に縮小し、構造審査の対象範囲を拡大します。

これにより従来は壁量計算のみで足りた二階建て以下・延べ五百平方メートル以下の木造住宅、でも延べ面積二百平方メートルを超える場合には許容応力度計算や保有水平耐力計算を要求される可能性が生じ、設計者は安全性と省エネ性能を数値で説明する責任を負うことになります。

高性能断熱材や太陽光発電設備の普及によって屋根・外壁の荷重が増す点が考慮され、柱断面や耐力壁の配置を再検討する必要があるのです。

意匠構造、エネルギー性能の三要素を同時に最適化する体制が求められるため構造建築士と建築デザイナーが早期に協議し計算ソフトや確認申請フローをアップデートすることが欠かせません。

自治体の審査体制整備には時間を要すると見込まれるため設計段階から審査期間を織り込んだ工程管理を行い、手戻りを減らしながら品質とコストの両立を図る準備が肝要です。

改正は負担増であると同時に木造技術を高度化し、住宅の価値を高める契機でもあります。

設計者はこの機会を前向きに捉え計算精度の向上やBIM等のデジタルツール活用を通じて業務効率を高めるとともに、施主に安心と納得を提供する仕組みを構築することが期待されます。

本稿ではこれらの変革を見据え、実務者が押さえるべき要点と円滑な移行のための具体策を解説します。

改正の背景と全体像

令和七年四月一日に施行される建築基準法等の改正では、省エネ基準への適合義務化と構造規制の合理化が同時に進められます。

国土交通省は脱炭素社会の実現を図るためすべての新築住宅・非住宅に省エネ性能適合を求めるとともに、構造関係規定を抜本的に見直す方針を示しました。

従来は高さ十三メートル・軒高九メートルを超える高層木造に限り詳細な構造計算が必須でしたが木造建築物の需要拡大を受け、三階以下かつ高さ十六メートル以下の建物は簡易な確認で足りるようになります。

一方で構造安全性を担保するため延べ面積三百平方メートルを超える場合は許容応力度計算などの厳格なチェックが義務化され、従来五百平方メートルで適用されていた閾値が引き下げられます。

背景には太陽光パネルや高性能断熱材による屋根・壁の重量増加があり、柱の太さや壁量の新基準を設けることで地震時の安全性を確保する狙いがあるのです。

木造住宅に求められる新たな構造計算ルール

改正ではいわゆる四号特例が大幅に縮小され、二階建て以下・延べ五百平方メートル以下でも審査が省略されにくくなります。

具体的には延べ面積二百平方メートルを超える「新二号建築物」に分類される木造戸建てでも構造計算書の提出が求められるケースが生じ、従来の壁量計算だけでは済まなくなるのです。

すべての二階木造住宅が建築確認の対象となるため、サイズの小さな住宅でも手続きが増える点は見逃せません。

これに伴い木造戸建の構造計算では壁倍率の上限引き上げや準耐力壁の算入といった新ルールを踏まえ、耐震性能を数値で示すことが求められます。

構造建築士では簡易計算法と許容応力度計算の選択基準を早期に整理し、確認申請図書の作成フローを見直す必要があります。

建築デザイナーも意匠と構造の整合を図りながら、屋根荷重増を前提にしたプランニングへ転換することが不可欠です。

その際、同一敷地で複数棟を計画する場合には合算面積で三百平方メートルを超えないか慎重に確認しなければなりません。

木造戸建の構造計算の内製化か外注かという判断も、設計期間とコストの両面で再評価する局面に入ります。

構造建築士と建築デザイナーが押さえる実務ポイント

改正後は確認申請時に省エネ関連図書とあわせて構造図書の提出が必須となり、申請準備期間が延びる傾向があります。

構造建築士は新しい壁量・柱小径算定式を反映したソフトや支援ツールを活用し、審査側が参照する計算根拠を明確に示すことが重要です。

建築デザイナーは意匠変更が構造フレームに及ぼす影響を早期にフィードバックし、外皮性能向上と構造安全性を両立させる提案力が問われます。

四号特例縮小により確認審査の件数が増加するため自治体ごとの審査体制や審査期間を事前に調査し、着工時期を逆算した工程管理が欠かせません。

許容応力度計算が義務化される案件では早期に地盤情報と荷重条件を確定し、梁成や接合金物を適切に選定することで設計変更コストを抑制できます。

壁量基準の見直しに伴い、家具固定や間仕切り位置による剛性偏心の対策も高い精度で検討する必要があります。

こうした点を踏まえ構造建築士と建築デザイナーが連携し、新制度に適合した木造戸建の構造計算を円滑に進めることで施主に安全・快適かつ環境負荷の少ない住まいを提供できるのです。

改正は負担増だけでなく木造技術を進化させる好機でもありますので、今のうちに最新基準を学びチーム体制と業務フローを整備することが望まれます。